地球環境良し、住んで良し、地域経済循環良し→訪れて良し
コロナ後を見据え、世界の旅人に選ばれる持続可能な地域観光の形を、栃木・那須塩原の地から、ESG視点で展望したい。
第1に環境だが、わが那須塩原市は昨年度、環境省の「ゼロカーボンパーク」に登録され、「世界の持続可能な観光地100選」にも選ばれた。世界の旅人は、円安進行による価格的魅力よりも、環境配慮・脱炭素を選択することが想定される。
世界有数の生物多様性の国・日本は、自然は遍在・タダ意識の下、自然との共存を捨てた結果、多くの弊害をもたらしてきたが、コロナ禍のアウトドア・マイクロツーリズム志向、国立公園満喫プロジェクトにより、各地でアクティビティ商品が広がり始めた。
身近なのに触れる機会のなかった地域の人々に、自然に親しみ、楽しみ、自然へのリスペクト・大切にする心を育む機会を提供し、コロナ後のインバウンド、リピーター需要には、世界でまれな、人々の生活と共存する生物多様性ホットスポット・日本の自然への体感を広げていただき、宿泊を含めた地域経済の外貨獲得のブルーオーシャンが期待される。
世界では、ローランドゴリラ生息域保護・見学ツアーなど責任観光が人気だが、塩原の山林でも、人臭マーキングによる獣害減少のため、トレランやヒルクライムコース整備・商品化を進めている。
食は観光の最大要素であるが、スローフード発祥のイタリアとは比較にならないわが国の複雑な気候風土は、個々の地域ならではの、特色ある魅力的農産食材・加工食品を育んでいる。
魅力的な地域食資源の発掘・研磨により、食の高付加価値化・価格転嫁を進め、地方観光産業から、インフレに負けない地域経済循環、デフレ脳からの脱却、若手人材の地方回帰を期待する。那須塩原市ではホエイの高付加価値化で焼菓子づくりを進めている。
第2に地域社会だが、地方都市の商店街や温泉街の再生が重要である。世界の有名観光地には、住人が楽しく、幸せに暮らす”街”が必須である。端的には、私たちの“住んで良し”に必須の、居酒屋・にぎわいの街を、モータリゼーションとドーナッツ化で、消失・シャッター通り化してしまった。
スペインバスク地方は、第2次世界大戦後の重工業衰退を、住民の幸せのため、バル巡り・ガストロノミーの街に変え、今や世界有数の観光地、スペインの外貨稼ぎ頭になっており、にぎわいの街づくりは、地域の最重要観光資源候補である!。
西須紀昭氏